「俺を助けろ」
これは本心だった。
虎杖に言えなかった言葉が沢山有る。
「お前は悪くない」
「やったのはお前じゃない」
「俺が摩虎羅を呼び出さなければ」
「五条先生は必ず戻ってくる」
「釘崎は……」
だけどそれらの言葉は慰めにもならないどころか、更に罪悪感を高めてしまうだろう。
そもそも俺達、呪術師には、過ぎたことを悔む時間は無い。
誰が死のうが、目の前の呪いを祓い続けるしかないのだ。
後ろに無辜の死体が積まれようと、振り向かず進むしかない。
虎杖が死んだ時に、俺がそうしたように。
どれだけの人が死のうと、どうせやることは変わらないのだ。
だけど、虎杖には、難しいことなのだろう。
こうして良心の呵責に苦しむ虎杖の姿は見るに絶えず、痛ましい。
救いたいと思う。
だが同時に、それに満足している自分がいるのも確かだった。
虎杖のこの苦しみは、真に善人である証。
俺の決断が正しかった証でもある。
最初に出会った時、俺は虎杖が救われるべき「善人」だと確信し、助命を願った。
実際、虎杖は少年院の時も死を顧みずに宿儺から身体を取り戻すことで、俺の信に応えてくれた。
虎杖は俺を裏切らない。
こんな逃れようもない絶望的な状況にあっても、なお、良心から目を背け楽になろうとせず、贖いのために苦しみ続けている。
血と泥と腐った臓物の匂いに塗れ、光を喪った瞳で、その身の内に潜む呪いの罪に足掻くその姿を見た時、俺は哀しみと歓喜に満たされた。
世界中の人間が虎杖を呪っても、俺だけは、虎杖の魂の清廉を知っている。
だから、一時凌ぎの慰めなど要らない。
もう一度、最初の贖罪に立ち返れ。
俺への負い目をその胸に刻め。
俺の為に生きろ。
俺の側で。
俺のために苦しみ。
俺が命を賭して守る価値のある魂なのだと。
証明し続けろ。
穢れなきお前の魂の救済のために
俺は
この命を使う
それこそが俺の
魂の救済