「のどいだい」
「こんどは何したんだよ?」と聞けば、昨夜はゲームしていてそのまま床で寝落ちしたと言う。
今まではどこで寝たって平気だったのに、と不満タラタラなそいつをベッドに追いやり、リビングの引き出しから掌サイズの銀色の缶を取り出す。
宿儺を祓い、虎杖は頑丈なだけの普通の人となった。しかしこれまでの生活習慣がそう簡単に変わるわけもなく、度々風邪をひくようになった。
喉が痛くなったり鼻水が止まらなくなったり、それでも丈夫なので発熱があるわけでもない。
だからその都度、俺たちの家には症状を緩和するための市販薬が増えていった。
布団に潜り込んだ虎杖の横に座り、缶の蓋を外す。内蓋に付いた小匙を取ってから内蓋を開けると、虎杖が「それ嫌いなんだよね」と顔を顰めた。
死蝋の指を飲んでたくせに、ほろ苦い粉薬が苦手だなんて笑えるが、実際、虎杖が自分で口に入れた時に盛大にむせたため、それ以後、これを飲ませるのは俺の役割となった。
樹脂の小匙で粒子の細かな白い粉をすくうと、虎杖は渋々と口を開いて舌を出す。
いつもより赤い舌の上に粉の塊を乗せてやると、虎杖は神妙な顔で口を閉じ、唇をもごもごと動かして口の中で粉を唾液と混ぜ合わせている。
こういう時の虎杖は、なにか小動物じみて可愛らしい。
小匙を戻し蓋を閉めて、缶をサイドテーブルに置くと、眉を寄せてまだ粉と格闘を続けているその頬を撫でてやる。
喉の痛みに悩まされているのは気の毒だが、こんな時間がずっと続いてほしいなどと思ってしまうのだ。